恐怖が記憶に根強く残る理由

大きな声では言えないのですが医療現場では「はっ!」とする出来事が度々おきます。

同じような経験でも、強い恐怖や不安を感じた出来事は、なぜかよく覚えているものです。幼いころに遊びに出かけた思い出でも、何事もなく楽しかったことはあまり覚えていないのに、迷子になったとか、溺れかけたときのことは、はっきりと記憶していたりします。なぜ怖かった出来事のほうが、忘れにくいのでしょうか?
不安や恐怖は、快感や不快感とともに、動物がもっているもっとも基本的な感情です。これらは危険から身を守り、生き延びるために発達したもので、生命にとって重大な意味をもつため、「情動」という特別な名前で呼ばれ、ほかの感情と区別されているといいます。情動が生まれるのは、大脳辺緑系にある扁桃体(扁桃核) という部位。扁桃体の扁桃はアーモンドのことで、形が似ていることからこう呼ばれています。
扁桃体は、脳の記憶メモリである海馬のすぐ隣りにあります。海馬は、脳のほぼ全域と連絡している。

何かを経験して神経細胞の新しい伝達経路ができると、海馬はそのパターンの情報を受け取り、必要に応じて再生することができるようになります。
このとき海馬は、入ってきた情報を強化したり弱めクたりするイコライザのような役目を果たす。何度もくり返し入力されるなど重要な情報では、海馬はシナプスの受容体を変成するなどして、以後同じ情報が伝わりやすくなるように神経細胞に作用します。
これを長期増強(LTP) といい、くり返し補強を受けた伝達パターンは最終的に長期記憶として長く残されることになります。
そこで話をもどすと、情動は動物にとって生存にかかわる重要な情報である。つぎに同じような場面に遭遇したときに危険を避けることができるよう、長く保存しておく必要があるのです。そこで扁桃体と海馬は隣り合わせでタッグを組み、恐ろしかった体験をけっして忘れないようにLTPを行なっているのです。つまり、恐ろしい出来事が忘れられないのは、人間が生き延びるための知恵とも言えるかもしれません。

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