仕事の中で検査の手順や方法、そして注意事項などははっきり言って患者さんはほとんど適当に聞いている。だから当日になって、食べてはいけない朝食を食べてきてしまったり、飲まなくてはいけない薬を飲んできてしまったり、飲まなくていい薬を飲んできてしまったり…と現場は大変。
ところが抗ガン剤の説明はどんな患者さんでもしっかり聞いてくれる。人は追い込まれないと真剣になれない動物なんだとあらためて思い知る。
がん細胞の最大の特色は、無節操にどんどん増えつづけること。健康な細胞に比べて、何倍ものスピードで細胞分裂をくり返す。抗がん剤は、その旺盛な細胞分裂を阻止するための薬。
盛んに分裂している細胞に出合うと、そのDNAに作用し、細胞分裂を起こす機能を破壊する。分裂できなくなったがん細胞は、やがて勢いが衰え消滅していく、という仕組み。
薬剤には内服薬と、点滴など静脈注射で投与するものとがある。この治療法の欠点は、副作用の強烈さ。
抗がん剤は、「盛んに分裂する」という特色をもつ細胞に出合うと、そのDNAを攻撃する。しかし、身体には健康な状態で盛んに細胞分裂する組織もある。たとえば血液をつくる骨髄細胞や、髪の毛を伸ばす毛母細胞、胃や腸の粘膜細胞などがその例。
抗がん剤はそれらの健康な細胞も攻撃する。だから化学療法を行をうと、副作用として貧血を起こしたり、髪の毛が抜けたり、強烈な吐き気や下痢に襲われたりもする。
それでも抗がん剤が使われるのは、白血病や広範囲に転移が見られるがんのように、がん細胞の部位が特定しきれず、手術や放射線での治療にはむかないケースが州あるから。そこで、がん細胞を殺そうとするのではなく、増殖だけを抑えてがんと共存しいく、そんなタイプの副作用の少ない抗がん剤が、これからは中心となっていくと考えられている。
がん細胞特有の増殖因子だけをブロックするタイプの抗がん剤や、副作用で減ってしまう血小板などを補う因子を投薬して免疫力を維持する「支持療法」など、新しい化学療法も開発されつつある。
ガンを宣告されると人間は真剣になるがそれよりもっと前に生活習慣、食習慣に対して真剣に考えるべきなんだと思う。
こういった情報はあまり浸透していない気がする。
経済も大切だけれど、もっと大切なこともあることに目を向けてほしいと常々思ったり思わなかったり。
現場は、とにかく大変。